IBの学習の方法(Approaches to Learning)「社会性スキル」を高める
本校のIBDP(国際バカロレア・ディプロマ・プログラム)English Bのクラス内容を一部ご紹介します。
IBでは学習を通して学べる5つの学習の方法(Approaches to Learning)があり、クラスを通してこの「学習の方法」を学びます。
- 思考スキル
- 社会性スキル
- コミュニケーションスキル
- 自己管理スキル
- リサーチスキル
今回のクラスプロジェクトはその中でも、特に「社会性スキル(Social Skills)」を高めることに焦点が当てられています。
IBのEnglish Bのクラスでは、下記の5つのテーマを2年間かけて学習しています。
・Identities(アイデンティティ)
・Experiences (経験)
・Human Ingenuity (人間の知恵)
・Social Organization (社会組織)
・Sharing the planet (地球の共有)
また、オーディエンス(読み手・聞き手)、場面、目的を意識して取り組むことを重視しています。
今回は、Identities(アイデンティティ)がテーマに選ばれ、サブテーマとして「Health(健康)」が設定されました。このテーマとサブテーマを元に、「10代の若者をターゲットにPromoting Health(健康促進)を目的としたポスターを作成する」を実行するプロジェクトでした。
グループでアイデアを出し合い、写真を撮り、キャッチフレーズを考え、工夫を凝らして、ポスターは完成し、校内の3か所に健康を啓発するポスターを掲示しました。Englishのクラス内は全てオールイングリッシュです。生徒たちは日頃学んでいる英語をより実践的に使うことで、英語の力も身につけていきます。
他者と協力的に作業するスキルが身につく
学習の方法「社会性スキル」の中でも特に重要なスキルは「協働」です。問題解決において協働し、そのプロセスにおいて、傾聴力、異なる意見をまとめる力、交渉力、また、そのプロセスを評価する力も高めることができます。
そのため、このプロジェクトのゴールは、ポスターの完成でもなく、先生やクラス内でのお互いに評価をする、というクラス内で完結することでもありません。
作成したポスターが、プロジェクトの内容を知らないオーディエンス(作品を見る人)に、どのような印象を与えたか、自分たちが伝えたかったメッセージは的確に伝わっているのか、をチェックしてフィードバックしてプロジェクトは完了します。
ポスターが完成した後に調査のためのアンケートを作り、クラス外の生徒の意見を聞いてまとめました。まさに、10代の若者である同年代の生徒たちから、ポスターから英語(健康促進)が伝わったかどうか、の評価を受けます。
結果はどうだったのでしょうか。後日、結果を聞いてみました。すると、
「実は、アンケートが上手くできなかったんですよ・・・」とG君。
「例えば、質問をYes/Noで答える形式にしてしまったので、それ以上の回答や理由が書かれていなかったんです。それに、3つの内、どのポスターのどの点が印象に残ったか、と特定できる質問ではなかったので、一体何が良かったかがよくわかりませんでした。これは失敗だった・・・」と、とても残念そうでした。
しかし、調査をする際、自分たちが知りたい情報を取るために、どのような質問を設定するか、これは今後に生かせる大きな学びです。G君も前向きに捉えていました。
また、今回のポスター作成を通して気づいたことを聞いてみると、「合意形成」をするプロセスでの学びが大きかったそうです。
「自分がいいと思っても、周りの人がいいと思わなかったら意味がないなと思って。基本的には自分の考えは貫くべきだと思うんですけど、より多くの人に訴えかけるものを作る時は、自分では、この案はないだろうと思うものでも、まずは耳を傾けるべきだなと思うんです。それに、意見を出す人が多ければ多い程、より良いと思われるものに集約されていくのではないかと思います。そういうプロセスが面白かったですね。」
これも、大切な気づきです。クラスプロジェクトには狙いがあるため、このような上手くいかなかった経験からでも、リフレクションをすることで社会性スキルは成長します。
このクラスを担当するレイミー先生も、「今回は僕自身は生徒の制作物に対する評価をしない。オーディエンスである他の生徒たちからReflection(振り返り)をもらって気づくことが一番だからね」とプロジェクトを通した生徒の成長が目的であることを強調していました。
今回ご紹介したクラスプロジェクトのように、IBのクラスでは「探求、行動、振り返り」を基本に学ぶ力を養っています。